お知らせ

2021年12月21日

ビッグデータの教育活用

 人間の行動予測に関する研究領域においては、縦断データは貴重な情報となります。近年では、個人の行動に関する膨大な縦断データが多くの場面で収集されています。しかしながら、このような情報は個人の行動を予測する上で問題を抱えていると考えられます。私たちは日常の中で、学習や購買といった様々な行動を繰り返しており、その行動を「いつ」行うかという条件(タイミング条件とよんでいます)は無数に想定されます。先述の潜在記憶に関する研究に基づくと、わずか1回の行動や情報との接触という微細な経験の影響は長期的に残り、その後の判断や行動を変容させると考えられます。つまり、縦断データを用いて、微細な経験の影響も含めた人間の行動予測を行うためには、タイミング条件を含む時間次元に想定される条件を制御する必要があるといえます。私たちは、このような条件を制御した上で、学習者一人ひとりの学習データを長期的な縦断データとして収集する技術(マイクロステップ法のスケジューリング技術)を確立しました。さらにこの技術を英単語学習に用いることで、潜在記憶として英単語の情報が保持され、成績が上昇していく様子が可視化されました。これにより、元々の学力の高低に関わらず、自身の学習行動に応じて成績が上昇するという情報を学習者に提供することが可能となり、学習に対する意欲の向上と維持を支援する状況を作り出しています。

 私たちは、学習における成績の変動をはじめとする個人の行動に関する時間的な変化を詳細に明らかにするためには、心理学における研究法に関する知識と、膨大な学習コンテンツの一つひとつについての学習スケジュールをシステムに適用させるために必要なデータベース技術の、異なる2領域の融合が不可欠であると考え、研究を進めています。この研究はこれまでに、科学研究費補助金(基盤研究B(研究代表:寺澤 孝文、課題番号:11559013)、基盤研究A(研究代表:寺澤 孝文,課題番号:14209010)、基盤研究A(研究代表:寺澤 孝文,課題番号:22240079)の助成を受けています。また、この研究の成果については、寺澤・吉田・太田(2007)を参照ください(引用情報)。方法論およびシステムとして実現するための基本的な枠組みに関することについては、寺澤(2006:特許第3764456)および寺澤(2004: PCT / JP2004 / 006487)を参照ください。